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By J.K - 2007/01/14 23:58

 兄が妹を、妻が夫を殺し、その遺体をバラバラにする。東京・渋谷で、陰惨な事件が相次いだ。捜査にあたる警視庁幹部は「衝動的に殺してしまうところまでは理解できても、遺体切断という行為への飛躍を埋める答えはなかなか見つからない」と語る。「家族の遺体」をモノのように扱う心。そこに至るまでに、何があったのか。

 「遺体切断という行為への飛躍を埋める答え」は、「なかなか見つからない」というよりは、愛すべきはずの家族(の死体)を物の
ように切り刻む行為を単に"処理の問題"として扱っているかのような加害者の心理を"社会的に(人として)理解したくない"というのが本音のような気がする(少なくとも自分はそうだ)。だけれども、

 家族なのにどうしてこんな残酷なことをするのか――。「死体を探せ!」などの著書のある美術評論家の布施英利さんは、「家族なのに」ではなく、「家族だから」と考える。身近な人の死を人間はすぐに受容できない。だから死を受け入れるための儀式として葬式を開く。「今回はその儀式が異常な形で現れたのではないか」

 考えてみると、確かに人の"死体"の扱いに関する「正しい考え方」などあってないようなものだ。「切り刻む」という行為が牛や豚などの食用物に対する行為と同じように見えるから「残酷」だと思えてしまうが、葬式の後、宗教儀式の一環として遺体を「焼却」するという「儀式」も、純粋に単なる行為として見るならば、両者には「それを為す人の思い」以外の何らの違いもない、と言えなくはないか。「動かなくなったもの」を「収納」するために、「切る」か「焼く」か・・・それだけの違いなのかもしれないと思えなくはないか。

 もちろん、常識で考えれば、また(この国にはあってないようなものだけれど)宗教的観念からみれば、それが間違った行為であることはすぐにわかる。が、殊この加害者がその行為をするに至った環境は、その「常識」の通用する範囲にはない。愛すべき家族から「夢がないね」と罵られたり、愛すべき夫に裏切られたりすることは、「常識」ではない。愛情を期待した相手にそれを裏切られた人間が抱く憎悪の大きさは、「常識」を簡単に狂わせる。

 引用にある見解とは異なるけれど、それが「家族なのに」ではなく「家族だから」こそ、ということじゃないかと思う。もちろん想像でしかないし、だから理解してあげるべきだとは言わないけれど、愛すべき家族、愛したい家族であればあるほど、それが「裏返って」しまったとき、そこに遺体を「切り刻む」という行為をするに至る「答え」が生まれてしまうんじゃないだろうか。

 人骨を保存収納することは宗教的に認められる常識だけれど、人を切り刻んで保存、あるいは処分することも、それと同じような意味を持つ行為として(加害者に)認識されてるんじゃないだろうか。もう一度、自分を愛する存在となって「戻ってきて欲しい」という思いが、そうさせるんじゃないだろうか。

 殺したいほどに「憎い」、そして殺してしまった。二度と会いたくはないし見たくもないが、本当は愛して欲しかった。会いたくないから切り刻む。が、既にそこに憎しみはない。あるのは、どうにもならない過去の希望。愛して欲しかった、私を愛すべきだったという思い。そういう複雑な(誰にも理解されない)思いが、はっきりとしない受け答え、「謎の狂気」と呼ばれてしまう原因を作っているんじゃないだろうか。

 人と人との関係が希薄になってきていると言われ続けて久しいけれど、希薄だからこそ欲するものは大きく、また欲するものが大きいほど、それが叶わないと分かったとき(思い知らされたとき)の絶望は大きくなる。

 人と人との関係が希薄だから、愛すべき家族の死体を切り刻むという残酷な行為に及ぶことが出来る、というのは直列つなぎにはならない。一度「裏返っている」ところに、この問題を解決するための鍵があるんじゃないだろうか。

 余談。従順で物言わぬペットを「家族」として愛そうとする人が増えたのは、あるいは今回の事件と(深層の部分で)表裏一体を為しているんじゃないだろうか。自分の愛に見合う「愛」を返してくれる存在を、人間は欲しがるものだ。

Quot : http://www.asahi.com/national/update/0113/TKY200701130331.html

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